実践OpenBIM

9. GLOOBEとのIFC検証

9-8. 検証結果報告

今回検証してみて、興味深い検証結果が得られました。

9-8-1. 階情報の持ち方

IFCには、屋根階という概念があり、それに対応できているアプリケーションとそうでないものが存在します。Vectorworksを含む欧米のアプリケーションは、屋根階を別ストーリとして出力します。

例えば、今回の建物は地上2階、地下1階の建物ですが、屋根階を別ストーリとして出力した場合、アプリケーションによっては地上3階と認識してしまう可能性があります。

そこで GLOOBEでは、別ストーリで出力された階層を屋根階として指定して取込むオプションがあります。

欧米系のアプリケーションとの階情報のやり取りの難しさが垣間みれました。

 

9-8-2. IFCの付加情報の読み取り

Vectorworks、GLOOBEともにデータ構造はしっかりとしており、比較的スムーズな連携が行なえました。

ただ、Vectorworksではスペース名称をカスタム入力で部屋名等を入力しましたが、GLOOBEでは「カスタム」と表記されてしまいました。Vectorworksでは、プリセットデータの部屋名称を選択することで、これを回避できました。

柱や梁、壁はRCなのか、SRCなのかといった情報を持つことができます。

Vectorworksでは、壁や柱といったオブジェクトに「Ifcデータ」ダイアログで情報付けを行なうことで、他のアプリケーションとのデータ連携が可能となります。

Vectorworks側では、「Ifcデータ」ダイアログの「Material」の「Component1」にRCやSRCと記入することで、GLOOBEへ材質データとして受け渡すことが可能ですが、「どこのパラメータに、何のデータを記入するか」といった、事前の取り決めが重要であることが分かりました。

IFCデータ/プロパティ

 

9-8-3. 建具の開き方向

IFCでは、建具の開き方向をデータとして保持することが可能ですが、Vectorworks、GLOOBEともに現時点では対応していません。

Vectorworksは、IFCを3Dの不可逆データとして取り込みますので、形状の再現と情報の連携は他のIFCオブジェクトと変わりがありません。

一方、GLOOBEは、「マッピングテーブル」機能を用いて、GLOOBEのオブジェクトに変換することが可能です。

 

9-8-4. モデルの作成方法

アプリケーションが異なると、各種操作やモデリング方法が異なりますが、VectorworksとGLOOBEとの大きな違いがありましたので、ここに紹介いたします。

Vectorworksは、柔軟なモデリング方法に定評があり、後からIFCデータを追加することで、どのような形状でもIFCとして出力することが可能です。

一方、GLOOBEは柱等の建築オブジェクトを自由な形状に変更することが可能です。

例えば、詳細なエンタシス柱をIFCで出力する際、Vectorworksでは、モデリング後に「これは<柱>です」と言った宣言をモデルに与えます。

ミニツール

リアルタイムパラメータ

Vectorworksのプラグインオブジェクトには、様々なパラメータが搭載されており、開口部の編集を自由に行うことができます。ただ、開口部のスタディーとしていろいろな大きさを検討したい場合、データパレットや設定ダイアログで入力するよりも、スライダーなどで直接的に変更したいときがあります。そこで、窓の幅や高さ、高さ位置をダイレクトに調整できる道具をつくりました。

“リアルタイムパラメータ” の続きを読む

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8. CADWe’ll TfasIV との連携

8-4. まとめ

ご存知の方も多いかとは思いますが、ダイテック社の設備CAD製品の歴史は長く、ユー ザーも多く抱えています。

その製品がopenBIM対応となったことは、本格的なBIM時代の到来を物語っていると言えるのではないでしょうか。

CADWe’ll TfasIV、Vectorworks Architect 双方のIFCは相性も良く、モデルの欠落等は皆無でした。

また、設備のように3D上で複雑に納まる物体は、3D的な視点で確認しながらモデリングすることで、ミスが減り効率的になります。

CADWe’ll TfasIV は、設備設計に特化しているため、Vectorworksのような意匠系アプリケーションでは到達できない操作・モデリング環境を有しています。

建築では分業が進み、それぞれが手になじんだツール(BIMアプリケーション/CAD)を持っています。

BIMはツールではなく、概念です。手になじんだツールを持ち替えることなく、IFCのような標準化されたファイルを用いて、スマートでオープンなファイル交換を目指すことが重要です。

 

モデリング協力
株式会社ダイテック
株式会社ダイテック

使用アプリケーション
CADWe’ll TfasIV
CADWe'll TfasIV

CADWe’ll TfasIVの詳細は、株式会社ダイテックまでお問い合わせ下さい。

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7. ダイテックに聞く

竹口:
弊社はIAIに所属しておるのですが、御社もIAIの活動には積極的ですね。

山口:
はい、IAIでは、”技術統合委員会”の委員長を弊社の人間が務め、”設備・FM分科会”、”インプリメンテーション分科会”にも参加しております。
また、設計製造情報化評議会(C-CADEC)等にも積極的に参加しております。

竹口:
では、今後のopenBIMへの期待や要望があればお聞かせ下さい。

山口:
建設のプロセスには多くの人が携わるので、特定の企業とか、特定のソフトウェアメーカーだけがBIMに対応するのではなく、業界全体でBIMを推進していく必要があります。
国交省がBIMの試行案件を求めるなど、国レベルでもBIMへの感心が高まってきておりますので、BIMに対する理解も数年前よりも格段に上がってきています。
BIMやopenBIMの普及により、今までできなかったことが実現可能になります。ここに大きな感心があると共に、期待を寄せています。

インタビュー風景

竹口:
ありがとうございました。
引き続き、連携も宜しくお願いします。

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6. FlowDesigner 9 との連携

6-3.まとめ

環境系シミュレーションでは、解析結果を得るだけでなく、その結果を設計にフィードバックし、より良い設計へ導くことが重要と言えます。

ツールの進歩や社会情勢により、設計の時間はどんどん短くなる傾向にありますが、その中で効率よく解析結果を設計に盛り込む為にも、”解析の為のモデリング”等の2度手間を無くし、少ない手順で結果を得られることが理想です。

Vectorworks Architectからの精度の高いIFC取込みを実現するFlowDesigner9は、”やれることが前倒しになる”BIMワークフローに即した使い方が出来る、解析ツールでしょう。

 

解析協力
株式会社 アドバンスドナレッジ研究所
20111122144655547_1_original

使用アプリケーション
FlowDesigner 9
20111122144655547_2_original

FlowDesigner9の詳しい内容は、株式会社アドバンスドナレッジ研究所へお問い合わせ下さい。

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5. アドバンスドナレッジ研究所に聞く

竹口:
建築におけるCFD解析の需要や、今後の発展性をお聞かせ下さい。

池島:
極論なんですが、例えば家電量販店でエアコンを買う際に、店員さんが使えるようになれば良いと思ってます。
エアコンは、8畳用や12畳用等、室内ボリュームでの表記しかされておらず、窓の位置や部屋形状によってエアコンの設置位置は異なってきますし、選ぶ機器も変わってくるはずです。
店員さんが接客の際、部屋情報を入力して、空気の流れを可視化できれば面白いですよね。
熱い寒いは、日常生活にありふれた現象で、可視化されることでコミュニケーションの広がりが出ると思いますし、こういった広がりは、省エネ等に繋ると思います。
これはある種、FlowDesignerの究極のゴールでもあります。

竹口:
かなり使いやすいと、操作に関するサポートは少ないですか

インタビュー風景

池島:
この様なソフトウェアのサポートは2通りあると思います。1つは操作に関するサポートで、これに関しては非常に少ないです。もう1つは、解析結果に関するサポートで、こちらは非常に多くお問い合わせ頂いてます。これは、現場で使って頂いている結果だと感じております。

それから、まだまだ誤解があるのかな、と思うのですが、私達の製品はあまりにも簡単に解析出来てしまうので、計算結果に対して懐疑的になる方が多いようです。
現在、各種CFDとの精度比較を行なっていますが、結果に関してはとても誇れるものです。この点があるので、国内外の大学でも導入頂いているのだと思います。

樹木モデルの配置逆解析イメージ画像

竹口:
既にVectorworksから出力されたモデルを気流解析して頂きましたが、作業してみて如何でしたか。

黒岩:
地形や作り込まれた建物が有ったりと、結構複雑なモデルでしたが、Vectorworks側でクラス分け等がなされていたので、比較的少ない作業で解析が行なえました。
これだけスムーズにCADとの連携が出来ると、解析ツールとCADとの今後の発展性には期待が膨らみます。

Vectorworksで作成した地形モデルも、解析的には厳しいかな、と思いましたが、取込んでみれば問題無く作業が出来ました。(地形モデルは、メッシュモデルでIFCを書き出すことで、上記問題はクリアされます。詳細は、次章の連携記事にて。)

竹口:
今回の連携で、要望等はありますか。

インタビュー風景

黒岩:
いえ、特に無いです。
と言うのも、かなりスムーズに連携できました。モデルはCAD、解析はCFDとお互いの分担が上手く出来ており、メリットの方が印象に残りました。

実は私はCFDを扱い始めて半年程度ですが、解析に関して大きな労力を要さずに出来たのは、FlowDesignerのインターフェースがそのように開発されている為なのと、VectorworksとのIFC連携がスムーズだった為かと思います。

竹口:
今後のBIM連携(openBIM)への要望など、何かあればお話し下さい。

池島:
CFDの様なシミュレーションは、設計の上流段階で使ってこそ意味があると思います。簡略化されたモデルで解析してこそ、どのパラメーターがどう効いてくるかが判断出来ます。
設計の詳細が決定した後の設計変更はかなり厳しいので、ボリュームスタディ程度のモデルでのシミュレーションが逆に重要だと感じています。
良い実験結果を得るには、良い実験モデルが必要だと言うこと、これはシミュレーションでも全く同じなのだと思います。このあたりを設計者の方々が理解していただいて、効果的に 解析を実務に結びつけて貰えば嬉しいですね。
CFD解析におけるBIM連携では、大きな設計の枠組みを変えていく、つまり設計フローを従前のものからシフトしていくことが重要だと考えます。

インタビュー風景

竹口:
本日はありがとうございました。

引き続き、「FlowDesigner」と「Vectorworks Architect」との連携について解説いたします。