第37回 Spotlight解説講座では、Vectorworks 2025で搭載されたShowcaseのレンダリング設定や光の表現についてご紹介しました。
今回は、実際にコンソールと接続をするためのShowcaseとコンソールの設定方法をご紹介します。
目次
39-1. Showcaseと前準備
Vectorworks Spotlight 2025の新機能として搭載されたShowcaseは、照明デザインをリアルタイムでシミュレーションすることができるビジュアライザーの機能を有しています。
Showcaseのプリビジュアライゼーションの機能や設定については、こちらをご覧ください。
Showcaseと各種コンソールをネットワーク通信で接続することで、コンソールで行った操作を直接Vectorworksの画面上に表現することができます。
そのためには、まずVectorworks上で準備が必要です。
今回は、代表的なソフトウェアコンソールの1つとしてgrandMA3 onPCを使用した方法でご紹介していきます。
39-1-1. パッチ作業
Showcaseとコンソールを接続するためには、UniverseやDMX Addressが各照明機材に正しく設定されている必要があります。
Vectorworks Spotlightには、照明用番号付けコマンドやDMXパッチコマンドといった、スムーズにパッチ作業を行うための機能を搭載しています。
Vectorworksのパッチ機能について、詳しくはこちらをご覧ください。
39-1-2. フィクスチャーの設定
照明機材をコントロールするために、それぞれの照明機材にフィクスチャーデータであるGDTFを設定します。
GDTFの設定方法について、詳しくはこちらをご覧ください。
また、バージョン2025では直接GDTF Shareサイトにアクセスしたり、自動でGDTFを最新に更新するなどの新機能が搭載されました。
詳しくはこちらをご覧ください。
39-1-3. MVR取り出し
MVR(My Virtual Rig)は、照明機材や舞台セット、位置情報、パッチ情報などをまとめて保存できる形式です。
各種コンソールに読み込ませることで、コンソール側で再度設定する手間を大幅に削減します。
1. ファイル>取り出す>MVR取り出しを選択します。
2. MVRファイル取り出しダイアログでは、取り出すオブジェクトタイプを選択し、必要なものだけ取り出すことも可能です。
例:Lighting Device(照明機材)、ポータブルステージ(舞台セット)、トラスなど
また、バージョン2025では取り出し時にGDTFファイルを更新を有効にして、GDTFファイルを最新のデータに更新することができるようになりました。
3. 出力したMVRファイルをコンソールに読み込み、照明機材の位置やパッチ情報を確認します。
※一部コンソールはMVRに未対応の場合があります。
準備が完了したら、コンソールとの接続準備を始めましょう!
39-2. ネットワーク設定
Showcaseとコンソールが相互に通信するために重要な点は、同じネットワーク(IPアドレスやサブネットマスク)の範囲内になければならないということです。
ここでは、ネットワーク設定についてご紹介します。
39-2-1.ネットワーク情報の確認
まずは、使用するPCに割り当てられたネットワークの接続情報を確認します。
Macの場合:システム設定>ネットワーク>接続しているネットワークを選択>詳細ボタン

Windowsの場合:コントロールパネル>ネットワークの状態とタスクの表示、もしくは ネットワークと共有センター>アダプターの設定の変更>接続しているネットワークを選択>詳細ボタン

39-2-2. IPアドレスについて
Showcaseとコンソールの接続方式(ネットワークプロトコル)で何を使用するかで、IPアドレスやサブネットマスクの設定が変わります。
IPアドレスは、一般的にクラスA、クラスB、クラスCの3種類に分類されます。
クラスA
IPアドレスが 10.0.0.1 のように構成されます。
0.0.1がホスト部となるため、大規模なネットワークに対応し、多くのデバイスに割り当てることができます。
クラスB
IPアドレスが 172.16.0.1 のように構成されます。
中規模なネットワークに対応しています。照明ではあまり使われないクラスです。
クラスC
IPアドレスが 192.168.0.1 のように構成されます。
小規模なネットワークに適したクラスで、プライベートIPアドレスとして広く使用されています。
また、特別なIPアドレスとして以下のものがあります。
ループバックアドレス
IPアドレスが127.0.0.1 で構成されます。
自分自身を指すIPアドレスで、同一PC上でShowcaseとコンソールを接続する場合に使用します。
39-2-3. ネットワークプロトコルについて
ネットワークプロトコルとは、コンピュータなどの機器同士で相互に通信するための共通ルールです。
Showcaseには、Artnet、MA-Net3、sACNの3種類のネットワークプロトコルから選択できます。(設定する場所は後述します)
Artnet
Artnetは、従来DMXケーブルで通信していた照明制御信号を、イーサネットネットワーク上で伝送するためのプロトコルです。
これにより、LANケーブルを使用して照明機器を制御できるようになります。
一般的によく使われているプロトコルで、ブロードキャストまたはユニキャストを使います。
Artnetは、主にクラスAのIPアドレスに対応しています。
厳密には192.168.x.xのIPアドレスも使用できますが、デフォルトでクラスAに対応しているため、10.x.x.x(または2.x.x.x)のIPアドレスを使用することを推奨します。
また、サブネットマスクは 255.0.0.0 を使用します。
MA-Net3
MA Lighting社の照明コンソール「grandMA3」で使用されるネットワークプロトコルの一種です。
grandMA3で制御した照明データを、ビジュアライザー上でリアルタイムにシミュレーションすることができます。
MA-Net3は、クラスCのIPアドレスに対応しています。
192.168.x.xのIPアドレスを使用します。
また、サブネットマスクは 255.255.255.0 を使用します。
sACN
sACN(Streaming Architecture for Control Networks)とは、DMXデータをIPネットワーク経由で伝送するための高性能なプロトコルです。ANSI E1.31で標準化されています。
sACNはマルチキャストを使用し必要なデバイスにのみデータを送信するため、ネットワーク負荷が軽減され、大規模な照明システムに適しています。
また、サブネットマスクは 255.0.0.0 を使用するのが一般的です。
39-3. Showcase設定
Showcase側で接続設定を行います。
1. 舞台照明>Spotlight各種設定>Showcase設定を選択します。
2. Showcase設定ダイアログのDMXデータプロバイダから適切な接続方式を選択します。
DMXデータプロバイダ
Artnet、MA-Net3、sACNの3種類からネットワークプロトコルを選択します。
今回は使用するソフトウェアコンソールがgrandMA3 onPCのため、ここではMA-Net3を選択します。
3. DMXデータプロバイダでMA-Net3を選択した場合、続けてオプションボタンから接続設定を行います。
ネットワークインターフェイス
コンソールとの接続に使用するネットワーク(IPアドレス)を指定します。
MA-Net3バージョン
接続するMA-Net3のバージョンを選択します。
PC内に複数のバージョン情報が存在している場合、プルダウンから選択できます。
Updaterを選択することで、最新バージョンのダウンロードを自動で行います。
4. ネットワークの設定が完了したらOKで閉じます。
39-4. コンソール側の設定(grandMA onPCの場合)
コンソール側でもShowcaseと接続するための設定を行います。
1. メニュー(歯車ボタン)をクリックし、Networkを選択します。
2. grandMA3 onPCで接続設定を行います。
Select Interfaceで、Showcase側と同じネットワークを指定します。
3. 正常に接続されると、Network Nodeが追加表示されます。
項目が追加されても背景が緑でない場合は、Invite Stationをクリックします。接続要求が再送信され、緑に変われば成功です。
4. Showcaseや他のビジュアライザーとgrandMA3 onPCを接続するには、Viz-key(ドングル)が必要です。
接続されていれば「Type」の欄がViz+Dongleと表示されます。
※未所持の場合はMA Lighting代理店より購入可能です。
以上で接続設定は完了です。
舞台照明>Showcase>Showcaseを開始を実行し、コンソール側で照明機材を操作してみましょう。
これでVectorworks Showcaseを使⽤したプリビジュアライゼーションを開始できます。ぜひご活用ください!
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