実践OpenBIM

3. NYKシステムズに聞く

竹口:
設備設計を3Dで行なうメリットをお教え下さい。

小倉:
BIMという言葉が出てくる前から 一部の先進的なユーザー様の間では、見積の為の設計図ではなく、現実に即した図面を作成するという試みが行なわれてきました。

RebroのIFC取り込みダイアログ

竹口:
現実に即した図面というと?

小倉:配管、ダクトは中に流体が流れ、電気もつながりがあります。ボリューム感も大事ですので、実際に物量が納まるのか、設備として無理はないのかということが重要になります。
これは施工できる図面を設計段階で描くということではありません。

廊下の幅より大きなダクトは描かないなど、現実的な観点で設計図を作ることが 3D設計の発想です。

インタビュー風景

 

竹口:
かなり昔から3Dの考えが有ったのですね。

小倉:
グレードの高い仕事をしている設備設計会社では、かなり前から3Dの考え方がありました。

それこそ、PCの出始めの時代から3D設計を意識していた会社もあります。

 

竹口:
「グレードの高い仕事」。気になる言葉ですね。

小倉:
非常に難しい物件、例えば最新の工場とか、意匠的に凝った建築を手がける方々の仕事です。

最近ですと、何処までが意匠で、何処までが構造かわからない様な複雑な建築がありますが、その様な建物に、きちんと設備を納めるには、3Dが必須なんです。

ユーザ部材のプロパティ

 

竹口:
Rebroのターゲットとする企業規模はあるのでしょうか。

小倉:
設備専門CADですので、いわゆるサブコンさんと言われる設備専門業者さんがメインですが、企業規模は関係ないと考えております。

データの流れは一社の中に留まらないので、設備に関係する人全てがターゲットです。

インタビュー風景

 

竹口:
ところで、昨年のBuild Live Tokyo、今年のBuild Live Kobeにて、協賛企業として”日本酒”を提供していたシーンが印象的です。NYKシステムズさんの会社概要をお教え頂けますか。

小倉:
当社は、日本容器工業(株)を親会社に持ち、グループ会社に(株)エヌ・ワイ・ケイがあります。 エヌ・ワイ・ケイは、日本酒、ビール、醤油などの醸造タンクで 70%以上のシェアを持つタンクメーカーです。

また、鋼板製一体型水槽や、蓄熱槽、防火水槽などの建築設備のタンクも手がけておりますので、建築設 備の方々にはそちらの方が馴染みがあるかもしれません。特に鋼板製一体型水槽は堅牢で、先の東日本大震災でも被害が全くありませんでした。

”日本酒”と”設備 CAD”の組み合わせを意外に思われるかもしれませんが、Rebro を開発している株式会社NYKシステムズは、これまでの設備CADの常識に捕らわれない醸造用タンクにルーツをもつ日本容器工業(株)のグループ企業・・・、と憶えて頂ければと考えております。

 

竹口:
なるほど、日本酒と繋がりました。

Build Live Kobeでは、日本を代表する”銘酒”を提供しておりましたが、やはりそこのタンクも日本容器工業さんなんですね。

小倉:はい、そうです。

インタビュー風景

 

竹口:
それでは、今後のopenBIMへの期待をお聞かせ下さい。

RebroのIFC取り出しダイアログ

小倉:
openBIMは「餅は餅屋」で、ベンダーがそれぞれ得意な所を伸ばして、ユーザーが必要に応じて使い分けるというのが、発想の根底に有るのかと思います。

ただし、それぞれが連携しだすとなると、例えばベンダー1社とか、ユーザー会1グループでは、対応は厳しくなると思います。

「連携の精度をどう上げていくか」に対しては、個別案件でのベンダー同士の話し合いではなく、もっと包括的な枠組みが必要になると考えます。

VectorworksでRebroのIFCを取り込む

 

VectorworksのIFCデータダイアログ VectorworksのIFCデータダイアログ

竹口:
ありがとうございました。引き続き、VectorworksとのIFC連携も宜しくお願いします。

 

次回は、Rebroと、VectorworksとのIFC連携について解説いたします。

実践OpenBIM

2. VectorworksからIFCを出力する

2-1-4.

6. スペースが上階スラブまである。

では、Vectorworksファイルのスペース情報を変更します。
テンプレートファイル内に配置されたスペースには高さ情報が設定されておりませんので、3D表示にチェックをいれ、「天井高:」にシーリングまでの数値を記入します。

データパレット

各部屋の天井高を設定します。

  • LD:2,500mm
  • 和室:2,500mm
  • キッチン:2,200mm
  • 廊下:2,150mm
  • 洋室:2,500mm
  • クローゼット/押し入れ:2,500mm
  • 物入:2,150mm
  • 洗面室/ユニットバス:2,150mm

 

2-1-5.

7. ifcモデルツリーに文字化けがある。

基本的にアルファベット圏で開発されたアプリケーションは2バイト文字(日本語や中国語等)には対応していない場合が多いです
*。 せっかく情報付けしても、文字化けで相手へ意味が通らなければ骨折り損になってしまいます。 デザインレイヤ名称と、スペース名をアルファベット表記にします。

*日本語の情報がやり取り出来るアプリケーション/ビューアもあります。情報連携の際は、各アプリケーション間の環境を事前に確認して下さい。

レイヤ名の変更

 

データパレット

修正したデータは「ユニットモデルifc(sample_ifc)」としてアップロードされています。 確認下さい。

 

2-1-6.

上記を修正してIFC書き出しを行ないますが、かなり手間を感じた方も多いと思います。

しかし、実際のデータのやり取りでは、カスタムした家具をやり取りすくことは少なく、特に意匠設計においては、Vectorworksの標準的なツールで作成したデータで過不足は無いかと思われます。
意匠モデルとしては、「スペース」「柱」「梁」「壁」「スラブ」「建具」「天井」「設備*」が、建築的整合性を保たれて入力されていれば、過不足ないモデルと言えます。

*設備に関しては、簡易な設備オブジェクトで位置を指定し、設備設計者へ設計意図を伝える程度にする。

つまり、現状は2バイト文字の扱いに注意さえすれば、IFCは出力されます。 皆さんも試して下さい。

次回より、Vectorworksにて作成したIFCモデルを用いて、他社アプリケーションとの連携を説明します。

実践OpenBIM

1. リファレンスビューア

1-2. IFCを見てみる

Vectorworks Architectで作成し、出力したIFCデータがアップロードされていますので、ダウンロードして下さい。

ifcデータ : オフィスビルサンプルifc

これらのIFCデータは、Vectorworks Architectを用いて取込むことが可能です。 しかし、IFCデータの一番のポイントは、データ互換にありますので、リファレンスのビューアーソフトで確認することをお勧め致します。

ここで言う「リファレンス」とは、ビューアーソフトとして特定のアプリケーションを推奨するのではなく、企業や個人にて、受け取った(または、受け渡す)データは、どんな形状で、どのようなデータが付加されているかを、客観的に確認できる”基準ソフト”を持つことを言います。

名のしれたオーディオ専門誌は、必ず視聴室に「リファレンスシステム」があります。このリファレンスシステムを基準として、メーカーから借りたオーディオ機器の特性や音を評価します。 この、相対評価基準のリファレンスシステムは、評価者にとっての「正解」でないことは理解頂けるかとは思いますが、それなりのレベルをクリアしていることが重要です。

皆さんも、IFCデータを活用する際は、相対評価基準となる「リファレンス」アプリケーションを利用しましょう。

今回は、Solibri Model Viewer(以下、SMV)を用います。

SMVは、WindowsとMacの両方に対応した数少ないIFCビューアです。

1-2-1. SMVをダウンロードする。

※本ビューアーをダウンロードする際は、Solibri社の使用許諾、プラバシーポリシー等に同意する必要があります。内容をよくお読み下さい。

1. http://www.solibri.com にアクセスする。

2. Products タブから、SMV を選択する。

Solibri社Webサイト

3.【1. Register and Login】にて、登録作業を行う。

登録画面

4. Java アプリケーションがインストールされていない場合は、【2.Verify that you have Java installed】にてインストールを行なう。既にインストールされている、JavaアプリケーションがSolibriに対応するかどうかは、Verify をクリックして診断することも可能。

5.【3.Start Solibri Model Viewer】にて、Start Solibri Model Viewerをクリックして、同意書を確認すると、自動でダウンロードが開始します。

6. ダウンロードが終了したら、Log Outしましょう。

 

1-2-2. SMVでIFCを見る

1. SMVを起動します。

2. Welcomeダイアログにて、取込むIFCデータを指定します。 3.IFCが取込まれました。

SMVでIFCを取り込む

3. 構成部材を選択して、インフォメーションウインドで情報を確認しましょう。

構成部材の情報

SMVは、グラフィカルなインターフェースにより、直感的操作が可能です。

Vectorworksユーザーには、最もなじめるビューアーと言えるでしょう。 Solibriの他に、DDS-CAD ViewerTEKLA  BIMsight等のビューアソフトがあります。使いやすさや、アップデートの頻度等を考慮して、リファレンスビューアーを決定しましょう。