Architect解説講座

新着記事第45回「壁の取り合い設定の改良」

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Vectorworks 2022で搭載された壁構成要素の回り込み設定機能は、Vectorworks 2023以降も強化され、それまで以上の機能性を有しています。
今回は、新しくなった回り込みの設定方法についてご紹介します。

壁構成要素の作成方法については、こちら
バージョン2022で搭載された際の記事は、こちらをご覧ください。

45-1. 壁との取り合い

壁との取り合いは、壁に対して、ドア・窓・シンボルなどの挿入物の相互作用を定義するために使用します。壁の断面、断面オフセット、および構成要素の設定を行っている場合は、その回り込み毎に壁の開口部の状態を設定します。壁の外側と内側で異なる断面を設定できるほか、開口部に接する4つすべての辺を個別に定義できます。

45-2. 新しくなった取り合い設定

壁および壁スタイルにおいて、壁との取り合い設定(構成要素の回り込み設定)を複数作成し、保存できるようになりました。特定の回り込み条件を持つ壁・窓・シンボルに作用します。

壁との取り合いは、壁スタイルの有無によって設定方法が異なります。それぞれについて紹介します。

45-2-1. 壁スタイルを使用している場合

1. 配置した壁図形の上で右クリックし、壁スタイルの編集を選択します。(もしくはオブジェクト情報パレットのスタイル>スタイルの編集を選択)

2. 壁スタイルの設定ダイアログの壁へ挿入時の端部処理をクリックします。

3. まだファイル上で取り合い設定を作成していない場合、壁との取り合い項目に「壁との取り合い-1」が表示されます。名前を変更をクリックして名前を入力します。ここでは「ドア-隅切り」とします。

4. 断面形状断面オフセット回り込みの3つの項目に設定を行っていきます。

断面形状
開口部に向かう壁の角度やRを設定します。ここでは外側形状タイプ隅切り角度15°斜長60と設定します。右画面でプレビューを確認できます。

断面オフセット
ズレオーバーラップオフセットの各列で断面と各種要素との重なりやずれを設定します。ここでは何もしないでおきます。

 

  断面オフセット設定について
RC造の壁を扱う際などに設定を行う場合があります。
計算方法:アイコンをクリックして、ズレ、オーバーラップ、またはオフセット列の断面の計算方法を指定します。
 ・ズレ = オフセット ー オーバーラップ 
 ・オーバーラップ = オフセット ー ズレ
 ・オフセット = ズレ + オーバーラップ
上列の計算結果によって、下列のフィールドが有効または無効になります。

挿入物のズレの値を固定値として使用:挿入物側でズレの寸法を定義する場合は、挿入物のオーバーラップまたはオフセット値を計算で固定値にするかどうか選択します。


回り込み
どの構成要素をどこまで回り込ませるかを設定します。ここではサイディングと空気層について、回り込み挿入時に回り込みにチェックを入れ、回り込み対象を「コアの中心」に設定します。

  チェックが入れられないときは
構成要素でコアが設定されていないと回り込みの設定ができない仕様になっています。コア設定をしていない場合は、壁スタイルの編集壁の構成要素ダイアログでチェックを入れてください。

5. OKでダイアログを閉じます。次に表示される壁スタイルの置き換えダイアログもそのままOKで閉じます。

 

6. プロジェクト内で複数取り合い設定がある場合は、壁との取り合い項目で新規をクリックして上記の方法で設定を行い、初期設定にチェックを入れることでスタイルへの適用を変更します。

  設定項目の変更
壁との取り合いシステムが導入されたことにより、それまでドア・窓の設定にあった「内側壁詳細」および「外側壁詳細」項目が削除されています。ここにあった設定が、取り合い設定上の「断面形状」と「回り込み」に移動しています。

45-2-2. 壁スタイルを使用していない場合

1. 壁ツールをクリックして壁ツール設定を選択するか、配置した壁図形を選択し、オブジェクト情報パレットの壁へ挿入時の端部処理をクリックします。

2. 壁へ挿入時の端部処理ダイアログで、スタイル使用時と同様に設定を行います。

45-3. 建具側で取り合い設定を選択する

建具を配置すると、壁図形や壁スタイルで設定した取り合い設定が適用されるようになりました。
壁内の建具の取り合いを統一することができて便利ですが、建具ごとにどの取り合い設定を使用するかを選択することもできます。

45-3-1. プラグインオブジェクトごとに選択

先に設定をして以降同じ取り合いで配置をする方法と、配置後に個別に変更をする方法があります。

1. ドアツールで配置したい形状のドアを1つ配置します。リソースマネージャパレットで、配置したドアの上で右クリックし、プラグインオブジェクトスタイルオプションを選択します。

2. 壁との取り合い設定を使用にチェックを入れ、壁との取り合い名から適用させる取り合い設定を選択します。OKすると、壁スタイルでの設定に関係なく、以降同じドアスタイルを配置する際は選択した取り合い設定が適用されます。

 グレーアウトしている場合
プラグインオブジェクトオプションをスタイルで使用している場合、項目がグレーアウトしていることがあります。その場合はリソースマネージャから対象の図形を右クリックし、プラグインオブジェクトスタイルオプションを選択して、壁との取り合い設定を使用壁との取り合い名項目を「インスタンス別」設定にします。

3. 配置後に個別に取り合い設定を変更する場合は、対象の図形の上で右クリックし、プラグインオブジェクトオプションを選択して壁との取り合い名から適用させる取り合い設定を変更します。

4. また 個別に取り合い設定自体を編集する場合は、対象の図形を選択し、オブジェクト情報パレットから壁との取り合いを選択します。

5.壁の設定を適用のチェックを外し、設定を変更します。ここでは、外側形状タイプ円形、半径:76とします。

6. OKすると変更が適用されます。

7. 窓図形を右クリックし、壁スタイルに壁との取り合い設定を適用(スタイルを使用していない場合は壁との取り合い設定を適用)を選択すると、行った設定が壁スタイルで適用されている取り合い設定に反映され、上書きされます。

 挿入物の設定で、窓台や沓ズリ、まぐさなどに設定を行っている場合にも取り合い設定が適用されます。

45-3-2. シンボルごとに選択

1. 図形をシンボルとして登録する際の、加工>シンボル登録で表示されるダイアログ上、もしくはリソースマネージャパレットからシンボルを右クリックし、シンボルオプションの編集で表示されるダイアログ上で、壁との取り合い設定を使用にチェックを入れ、壁との取り合い名から適用させる取り合い設定を選択します。

2. 配置したシンボル図形の取り合い設定を個別に変更したい場合は、変更したいシンボル図形を選択して、オブジェクト情報パレットの壁との取り合いをクリックし、壁の設定を使用のチェックを外して設定を変更します。45-3-1 手順4および5を参照ください。

45-4. 設定の管理

ファイル内の取り合い設定を、一覧で確認、管理することができます。

1. 建築>壁との取り合いの名前の管理を選択します。(Landmarkはランドスケープ>建築、Spotlightは舞台照明>建築からコマンドを選択)

2. 壁との取り合い名タブで、取り合い名の変更や、選択した取り合いを使用中の壁スタイルやオブジェクトを確認できます。

3. オブジェクトスタイルとシンボルタブでは、壁スタイルやオブジェクトごとに適用中の壁との取り合いを確認、および変更できます。

  モードの切り替え

壁ツールの改善により、直線や曲線といった壁の作図モードをシームレスに切り替えることができるようになりました。ショートカットキーU、I、O、Pを利用するとよりスムーズな作図が可能です。

より強化され、管理しやすくなった壁との取り合いの機能をぜひご活用ください。
強化された壁との取り合い設定については、動画でもご確認いただけます。

また、シンボル定義に開口部形状や壁との取り合いコンポーネントを追加する方法については、今後の記事で紹介を予定しています。

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