植物群落は、さまざまな方法でその土地の生態系のバランスを整えています。この記事では植物群落の重要性と設計例をご紹介します。
ランドスケープデザインや設計では、厳選された植物、舗装材、構造物、家具などを用いて、クライアントのビジョンを実現することが目標の中心となる場合がよくあります。しかし、ランドスケープデザイナーのMatthew Cunningham氏は、バランスの取れたデザインはクライアントの希望だけでなく、環境にも配慮すべきだと強調します。
植栽デザインの専門家として知られるCunningham氏は、植物群落が持続可能な敷地設計に欠かせない要素であると述べています。これらの群落を回復・保全することは、生態系のバランスや、より広範囲な景観を支えることにつながります。
持続可能な敷地設計がますます重要になる中で、植物群落に焦点を当てることのメリットは、気候変動への対応力強化や生物多様性の促進など、多岐にわたります。さらに、植物群落は、より広範囲な環境遺産に寄与し、個々の敷地を超えて持続する生態系の基盤を築きます。
1.植物群落とは?
植物群落とは、特定の環境で共に生育し、互いに、また周囲の環境と相互作用する植物種の集まりです。これらの群落は、気候や土壌の種類、水の利用可能性、動物や微生物との相互作用といった要因によって自然に形成されます。
例えば、砂漠の植物群落はサボテン、多肉植物、乾燥に強い低木で構成され、湿地の植物群落には葦、睡蓮、苔などが含まれることがあります。植物群落内の各種は、日陰をつくるもの、土壌に窒素を固定するもの、花粉を運ぶ生物を引き寄せるもの、草食動物を遠ざけるものなど、それぞれ役割を担っています。
2.ランドスケープデザインにおいて植物群落が重要なわけ
植物群落を理解し、取り入れることは、より持続可能な土地の創出や、自然生態系で進行している劣化の流れを逆転させることに役立ちます。北米全域では、気候変動による干ばつや山火事、嵐、そして種の移動が増加し、植物群落を脅かしています。火災は原生林を破壊し、洪水や浸食は海岸線や川岸の地形を変化させ、在来植物に依存する生態系に影響を及ぼしています。
しかし、前向きな変化も見られます。人々は土地とのつながりを取り戻し始めているのです。パンデミックの間に、多くの人が家庭菜園を始めるようになり、公共緑地の利用も増えました。こうした手法を見直し、現代技術と組み合わせることで、景観の再生、生物多様性の回復、重要な生態学的プロセスの復活が可能になります。
一度実践してみると、自然の回復力が目に見えて現れます。多様な植物群落は野生生物を呼び戻し、自然の分解サイクルを支えます。さらに、土壌に再び生命をもたらし、生態系を豊かにしていきます。
3.植物群落の管理手法
植物群落を考慮した設計とは、植物群落のニーズを理解し、それに応えることを意味します。次のような手法を検討してみてください。
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- 開放的な環境の提供 ー 植物が日光と空気を十分に取り入れて成長できるようにする
- 岩を割って隙間をつくる ー 植物が根を張りやすくなる環境を整える
- 水へのアクセスを確保 ー 水路を設けたり、霧やかすみから水分を集めたりする
- 野生生物を支える ー 動物や昆虫、植物が共存し、お互いの成長を助け合う
小規模な敷地でも、これらの工夫によって植物や野生生物の生息地を支え、景観の中で自然な共生関係を育むことができます。
4.植物群落を取り入れた設計例
Cunningham氏は、植物群落を敷地設計に取り入れたプロジェクトを例に、持続可能な取り組みが生物多様性と生態系のバランスをどのように支えられるかを示しました。
Le Petit Chalet:この設計には、流域パターンやドライクリークベッド(乾いた川床)、雨水集水システムが組み込まれており、持続可能な水管理を促進しています。木道や林の中の小径は環境への影響を最小限に抑え、他の生物が妨げられることなく生き生きと育つよう配慮されています。
Herrick Woods:ここは「森の実験室」として、ミツバチや蝶など花粉を運ぶ生物のための庭や、マイクロクローバーの芝生、草をあまり刈り込まず自然な状態を保った草地などを設け、生物多様性を育んでいます。森の中の散策路や花崗岩のトラフ(細長い水受け)を組み込んだ壁などの特徴は、自然な水の流れや循環を促し、この地域の生態系のバランスをより良くしています。
Suburban Jungle:自然石の小径や階段、雨水を管理するエリアを設けることで、浸食や雨水の流出を抑制すると同時に、空間の自然な美しさを引き立てることができます。こうした工夫で自然の浸食をコントロールすることによって、地元の植物群落が健やかに育つ環境が保たれます。
5. ひとつひとつの庭から波及効果を生み出す
植物群落を重視したプロジェクトは、敷地内にとどまらず永続的な影響をもたらす可能性を秘めています。地域の景観に植物群落を取り入れることは、地域全体の回復力や持続可能性の向上にもつながります。
植物群落に焦点を当てたランドスケープデザインは、クライアントのニーズと生態系への配慮を両立させる有効な手段です。Cunningham氏の言葉は、すべてのプロジェクトが、ひとつひとつの庭づくりを通じて自然を守り、再生し、より良くする機会を与えてくれることを思い出させてくれます。地域に適した植物の選択と生息地の再生を通して、地域社会や次世代のために、より健全で回復力のある環境を育てることができるのです。
Vectorworks Landmark の植栽ワークフローについて、詳しくは
University動画:「持続可能なソフトスケープデザインと植物仕様(英語)」をご覧ください。